今日は部活が休みの日。それでも、真面目な日吉なんかは早く帰って、自主練習をするんだろう。・・・いつもなら。


「・・・止まないな。」


今日は朝から生憎の雨だった。
放課後、一緒に帰ろうかな、などと考えて日吉の方へ行くと、日吉は窓の外を見ながら、ため息を吐いた。


「どうするの?」

「今日は仕方ない。・・・とりあえず、図書室にでも行こうと思う。」

「私も行っていい?」

「・・・構わないが。お前も図書室に用があったのか?」

「ううん、特に。でも、その後、日吉と一緒に帰ろうかな〜っと思って。・・・ダメかな?」

「いや・・・問題ない。」

「そっか。よかった。」


部活があるときはみんなと帰ったりもするし、今日みたいに部活が休みの日は日吉と帰ったりもする。だから、今更照れることはないんだけど・・・。その間に、一緒に図書室へ行く、ってことが加わっただけで、ちょっと気恥ずかしかった。
でも、そんなことを顔に出すわけにはいかないから、私は普段通りに話をした。


「日吉は図書室に用があったの?」

「別に読みたいものがあるわけではないが、最近あまり本を読んでなかったからな。」

「私もー。つい部活を優先しちゃうからね。」

「あぁ。だから、この機に読んでおこうと思ってな。」

「そうだね!」


こうして、私たちは読書に勤しもうと、学校内のそれはもう立派な図書室へ向かった。
・・・はずなんだけど。いや、ちゃんと図書室には来た・・・し、自分の気になる本も選んだ。だけど、その後、読書なんてできなかった。
だって・・・日吉が居るんだもん。
日吉が居るのは当然だ。一緒に来たんだから。それに、一緒に帰ろうとも言ったから、それなりに近い所に座るのが自然だろう。


「・・・・・・。」


でも、やっぱり!!真剣に本を読んでいる日吉の姿をこんなに近くで見れるなんて・・・と、本よりも日吉の方にばかり、チラチラと視線を向けてしまう。
・・・ダメだ、集中できない・・・・・・!


「日吉・・・?」

「どうした?」

「いや・・・一応、何時頃に帰るのか、聞いておこうと思って。」


私は本から顔を離し、恐る恐る読書中の日吉に問いかけた。


「・・・別に何時でもいいが。・・・・・・そろそろ帰るか?」

「え・・・いいの?まだ読めてないでしょ?」

「まぁな・・・。だが、どうせ今日中に読めるともわからないからな。・・・もそう思ったんだろう?」

「え〜っと・・・うん、まぁ。そんなとこ。」


意外にも、日吉からの返答は私の都合のいいものだったので、それに便乗しておく。


「じゃあ、帰るか。」

「う、うん。」


そう言って、すぐに帰る準備をし始めた日吉に遅れて、私もいそいそと鞄を持って日吉に続いた。
そして、カウンターで貸し出しの手続きをし・・・私たちは帰路についた。
・・・もう本を読んでいる日吉の姿を見れないと思うと、ちょっと残念に思ったりもしたけど。でも、妙に緊張してしまうより、普通に喋れた方がいいよね、きっと。


「本、借りたはいいけど・・・。返却日までに読めるかな〜。また、明日からはつい部活中心になっちゃうからねー。」

「そうだな・・・。俺も去年までは結構読んでいたんだが。今年はそうもいかないからな。」

「どうして?」

「・・・・・・。」


普通に喋っていたから、私は何気なく理由を訊いた。・・・でも、日吉が少し言葉に詰まった。何か聞いてはまずかったんだろうか。


「日吉?」

「・・・あぁ。今年は・・・休み時間に読む暇が無くなったから・・・。」


日吉にしては珍しく、言葉に力が無いと言うか・・・。少し言い淀んだ感じだった。やっぱり、何か言いたくないことなのかもしれない。でも、明らかに話を変えてしまうのも不自然だから、私はやんわりと聞いた。


「今年は・・・忙しいの?」

「忙しいというわけではないが・・・・・・・・・。」


また少し悩んだ後、意を決したかのように日吉は口を開いた。


「今年はと話すことが多いからな。」


それを聞いて、私は考えた。・・・これが嘘の理由だとは思えない。でも、日吉は説明することを躊躇っていた。ということは・・・私には言いづらかったということだろう。つまり・・・。


「・・・私が邪魔してる?」


そう考えられる。私にはっきり邪魔だと言うのは、さすがの日吉も言い兼ねたのだろう。
・・・と思ったけど、そんな私の返答を聞いた日吉は、予想外だったというような顔をした。


「そんなわけがないだろう。」

「え・・・?そうなの?」

「当然だ。邪魔だったら、最初からそう言っている。」


・・・そうか。日吉は、そんなことを言うのを躊躇ったりしない人だったね・・・。それがいいのかはわからないけど・・・。


「でも、何か言いにくそうだったから・・・。」

「いや・・・そんなことはない。」

「そう?・・・じゃあ、私は邪魔ではないんだね?」

「あぁ。単に、本を読んでいるより、と話している方が面白いだけだ。」

「そっか〜、それはよかった。」


なんて返事をしてから、よく考えてみたら・・・。これって、読書よりも私との時間の方が楽しいってことだよね?それって・・・結構嬉しい。だって、去年は本を読んでたのに、今年はそれよりも私を選んでくれたってことじゃない?
もしかして、これが言い兼ねていた理由なのかも。・・・ちょっと、照れくさかったんじゃないかな。


「ありがとう、日吉!」

「別に・・・。お前を見てると飽きないからな。」

「あ、何それ!どういう意味ー?!」

「そのままの意味だ。」


その割に、今はすっかり意地悪そうな笑みを浮かべている。・・・何よ。相変わらず、性格悪いんだから!
・・・などと、口では日吉に文句を言いながら、実際は喜んでいた。だって、どっちにしろ・・・・・・、私との時間を楽しんでくれてるんだって思えたから。














読書の似合う男性は、素敵だと思います。日吉くんも、その1人ですね!眼鏡があると尚良いです!!
でも、私には読書シーンをしっかり描写する力が無いので、残念でした・・・(苦笑)。

何はともあれ、12月突入です!
明日からは、少し話が繋がっています。要は、ラストに向けて展開があるのです!期待はせず、お待ちいただければ、と思います(笑)。

('09/12/01)